作詞家・音楽プロデューサーのMINAMI KAZUHOが書き綴るノーコンセプトブログ。
<読売新聞ニュースより転載>↓******************************

「あるある」孫請け制作費、10年間で半減

3月10日3時3分配信 読売新聞

 番組制作会社で構成する全日本テレビ番組製作社連盟(ATP、工藤英博理事長)は9日、関西テレビの「発掘!あるある大事典2」捏造(ねつぞう)問題について、加盟88社を対象に行った緊急アンケート調査の結果を公表し、同番組の孫請け制作費は、過去10年間で半減していたことを明らかにした。

 調査は先月14〜20日に実施。局側との契約実態や今回の問題について尋ね、62社から回答があった。

 この中で、1次下請け会社である日本テレワーク(東京都)から再発注を受けた孫請け会社は、「あるある」の第1シリーズが始まった1996年当時、1本あたり1600万円の制作費が支払われていたが、以後4度にわたって減額されたと証言。今年1月の番組打ち切り直前は、860万円にまで下げられていたという。

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このニュース、一般の方には解り辛いと思いますが
非常に衝撃的なものです。

まず核心に触れる前に「テレビ番組制作のお金の流れ」を簡単に
説明しましょう。

テレビ局(発注元)

番組制作会社(制作請負)

というシンプルな流れと思いきや、さにあらず。
実際は

テレビ局(発注元)

番組制作会社(制作請負)

番組制作会社(制作孫請け)

という流れになることが多いのです。なぜか?
例えば「あるある」は毎週オンエアーされるテレビ番組。
毎月4〜5本の番組を制作しなければなりません。
余程たくさんのスタッフを抱える制作会社で無い限り、
それだけの量の番組を作るのは不可能なんです。

なぜか?

だってね、その会社が売上を向上させてゆくためには
「あるある」だけじゃなく、たくさんの仕事をテレビ局から
請けなければなりません。自社で出来る能力以上の発注を
請けようとします。その結果がこれ。

それだけじゃありません。こういう体質ゆえに、
番組制作の現場ではフツウの業界ではありえないコトがたくさんあります。

考えてみてください。
例えば1本の「あるある」を制作するのに、どれだけの役割が
必要だと思いますか?

・プロデューサー(お金を含めたトータル管理)
・アシスタントプロデューサー(プロデューサーのサポート)
・ディレクター(各現場の監督)
・アシスタントディレクター(上記のサポート)
・構成作家(番組のネタ・流れを企画し文章化します)
・構成アシスタント(上記のサポート)
・リサーチャー(ネタ元を調べたり街頭アンケートを行ったり)
・アルバイト(リサーチするには必須です)
・ロケカメラマン(収録に必要)
・ロケ音声(収録に必要)
・音効
・編集スタッフ
・スタジオ美術スタッフ(スタジオ収録もありますからね)
・スタジオカメラマン
・出演者
・司会者
・CG制作者(ネタ解説によく使われてますよね)
・写真カメラマン(テレビ誌に使われる写真、ありますよね)

大まかですがこんだけの人が必要なんです。しかも1本1本に。
もちろんそれぞれの役割は複数名存在することが大半で、
もちろん全員にギャラが必要です。
上記転載のニュースの「1本あたり1600万円の制作費が860万円に」と
いう件を見て、「そんなに制作費って高いの?!」と思った方は
よく考えてください。これだけの人間のギャラ+行動費+車両費やら
弁当代やら・・これだけあっても足りませんよ?

ここまでご説明すると・・どうして一次請けした制作会社が
孫請けに仕事を出してしまうか、お判りですよね?

テレビ局から仕事を請ける確率を上げるには、「よい番組」を
「安く作れる」ことが必要だからです。
でも、これだけ人件費がかかることが目に見えているわけですから
制作請けする側もリスクが高い=安く請ければ赤字になる可能性も高い。

であれば、
テレビ局から仕事を受け、総制作費をもらい、自分達の利益だけ
トップオフして確定させてしまう。例えば1000万円の制作費が来たら
200〜300万円、悪徳なところなら400万円近くを自分の取り分として
まず先に売上にしてしまうということです。
そして実際の制作は、こういった人気番組の仕事を喉から手が出るほど
欲しがっている弱小制作会社へ、残りのお金で振っちゃう、ってわけです。

孫請けした制作会社は、一次請けの制作会社から振られてきた
安い制作費で何とか黒字を出そうとするわけですから、手間隙をかけて
行動費が出ることは何としてでも抑えたい。
例えば街頭アンケートを実施する場合、「番組的にはこういう流れに
したい」という目標があってアンケートをとっても、実際はそうならない
場合だってあるわけです。そんな時、望ましい結果が出るまでアンケートを
実施してたらいつ終わるか判らないから・・・

ここで「改竄」とか「ウソ」が生まれるわけです。

それにもう一つ。
実際にテレビ番組を作る場合には上記のような多種多様なスタッフが
必要なのですが、実際の制作会社にはそんなにたくさんの人はいません。
どうすると思います?

フリーランスと言われる人を、とりあえずその番組を作っている間だけ
自社の人間として使うわけです。自社の名刺を持たせてね。
フリーランスだけでなく、こういった人材を派遣している会社だって
存在してます。実際「派遣」をするには国から「派遣業務」に関する
お墨付きをもらわないと出来ないのに、そんなこと無視してやっている
ところが無数に存在してます。

最悪でしょ?

ニュースの中にある「制作費が半減した」ということの実体は、どこが
どうしてそうなっていたのかは判りません。
大本のテレビ局が「制作費をもっと安くしろ」といった結果かもしれないし
一次請けのテレワーク社が自分のトップオフ率を高くしたのかもしれないし。

ちなみにテレビ局はどこで儲けるかと言えば、いわゆる「番組スポンサー」。
人気番組で視聴率が高ければ高いほど、その枠を使って自社商品やらを
宣伝したい企業が莫大なお金をテレビ局に払います。
実際はそれを仲介するのがいわゆる「広告代理店」で、彼らもその仲介で
自分達の利益を取ります。

なんかね、テレビの仕事って夢があるように見えて、実はものすごく
アナログで扶養家族の多い(笑)仕事なんですよね。

きちんとしたモノを作るには、時間も手間もお金もかかる。
これ、当たり前です。
それを何とかネグってでも利益追求・利益至上した結果がこうなった気が
して、僕は非常に「イヤな世の中だなあ」と思ったりするわけです。
 

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プロフィール

mkazuho

Author:mkazuho
MINAMI KAZUHO(南一帆):作詞家・音楽ライター・コピーライター。MINAMI KAZUHOは文筆活動時のペンネームで、音楽プロデューサーとしては本名を名乗っている。80年代後半の大学在学中に本格的なバンド活動を行う中でプロダクションに所属。アーティスト活動と平行して作詞提供を行い数々のヒットに携わる。大学卒業間際にバンドを解散、その後レコード会社に勤務し音楽制作ディレクターとして活躍。現在もプロデューサーとして良質な音楽とヒット作りに邁進中。2009年には音楽業界歴20周年を迎える。趣味はF1観戦・映画鑑賞(ティム・バートンものに目がない)・美術館巡り・クロースアップマジック、そしてもちろん音楽鑑賞。THE BEATLES・PHIL COLLINS・RUSH・AEROSMITH・ROXY MUSICその他を愛する雑食系洋楽オタクでもある。 (Photo by JUN ABE)

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